Tokyo Club Report
今や東京は、ロンドンやNYに勝るとも劣らないミュージックスクランブルシティと化している。青山ブル−ノ−トではマ−カス・ミラ−が、武道館ではクラプトンが、NHKホ−ルではウィ−ンフィルが、中野サンプラザではバリのケチャ舞踊の公演と、ジャズ、ロック、クラシック、民族音楽に至るまで、ジャンルを問わず海外からひっきりなしに著名なア−チスト、ミュ−ジシャンが来日しているご時世である。それにも増して、あらゆるメディアから発信される情報の洪水。アンテナを張り巡らせたのはいいが、いちいち耳を傾けているとオーヴァードーズでパニックになりかねないといった状態だ。ワタシなど、一時はUSハウスの新譜をくまなくチェックしなければならないという脅迫観念に襲われ、深刻な経済的危機に陥ったことがある。(ゆえに、リハビリの為にインドに行かなければならなかった)
さて、欧米のクラブミュージックシ−ンと比較して、オリジナルのクラブカルチャ−がないといわれる日本だが、はたして本当にそうだろうか。以前、イタリアのトスカ−ナ地方へ旅行したとき、イタ飯を勉強しに来ている日本人の若手シェフとミシェラン片手に三ツ星レストランを片っぱしから食べ歩いたことがある。(日本に帰るまえに金を使い果たしてしまおうと思ったのだ)どの店もそれはそれは美味だったのであるが、値段やサ−ビス、その他諸々のコストパフォ−マンスにおいて、日本にあるイタリヤ料理店を凌ぐ店はついぞ巡り合うことはなかった。ここ数年のイタ飯ブ−ムで、東京にはイタリア料理を食わす店が腐るほど出来たが、バブル以後淘汰され、その結果生き残った店はどれも本場を凌ぐほどの味を提供するまでになったといえるのではないか。そして、それはクラブミュージックシ−ンにも当てはまるのではないかと思ったのである。
アジアのみならず、世界で最も安全で気軽にナイトクラビングを楽しめる街、東京。大物ゲストDJのパ−ティ−に関しても、週末はまさにイベント三昧でどれをチョイスしていいのか迷ってしまうほどだ。向こうでビックネ−ムだからといって、日本であからさまに手を抜いたプレイをするDJがいる?ん〜、まぁ、なかにはいるかもれれない。(苦笑)でも、地元のレギュラ−パ−ティ−より、日本の方がチヤホヤされて気持ちが入りやすいんではないだろうか。みんな手を上げて盛り上がっているし。(笑)海外のDJに支払われているギャラの高さは本国の比では無い筈だしね。(ちょっと皮肉)特筆すべきことは我が国にも欧米のDJに負けないくらいの器量を持ったDJが数多く存在することだろう。渋谷宇田川町は世界最大規模といっていいほどのレコ−ト店密集地域であることはいうまでもない。日本人DJのスキルは既に海外のDJをおおむね凌駕しているのは周知の事実であり、潜在的なDJ人口もおそらくナンバ−ワンに違いない。つまり、いかに耳が肥えている人が多いかってこと。(なんせ、世界で一番タ−ンテ−ブルが売れている都市なんだから)ヴェルファ−レのB&Sがオリジナルのパ−ティ−を遥かに上回る規模で大成功を収めたのは記憶に新しい。かって、本物のソウルミュージックを体験したければNYやシカゴに行くしかないと真面目に語られていた時代があった。今となっては笑い話にもならないが。実際に向こうに行ってみて感じたのは、東京は他の大都市と比較してみても音楽的に何の不自由もなく、むしろ非常に恵まれている環境だということだった。この街でしか味わうことのできない良質なハウスパ−ティ−だってあるのだ。そろそろ皆気付きはじめていい頃だ。ってか!〆。
GALLERY 〔CAY〕 − 東京都港区南青山 6-10-1 スパイラルビルB1F
今、東京で最も勢いのあるハウスパーティに「GALLERY」の名を挙げる人は少なくない。2ヶ月に1回、青山のタイレストランCAYで行われるこのSUNDAY AFTERNOON PARTYは、いまだ海タレDJ至上主義がはびこる国内の様々なハウスイベントにおいて、まさに日本版BODY&SOULと呼ぶに相応しい熱狂的な盛り上がりを見せている。日本人とフランス人のベテランDJ数名が醸し出すST Garman?テイストなサウンドカラーは、都内はもとより海外でも類を見ないCOOLな個性を放っている。まるで親しい友人のパーティに招かれたようなアットホームな雰囲気が素晴らしい。本当に心の底からハウスミュージックが好きな人達で築き上げたパーティでないと、なかなかこうはいかないだろう。D・マンキューソーが回していた初期のロフトもGALLERYと似た心地よい空間だったのではないだろーか?もしかしたら日本で最初の海外に誇れるべきハウスパーティなのではないかとさえ思ってしまう。いやいや、マジで誇っていいパーティでしょう。この国を訪れる外国人のほとんどがその物価の高さに驚き、とりわけその高額なクラブ代に難色を示すことが多いのだが、(B&Sでさえ15ドルである)千円というリーズナブルな価格は彼らにも躊躇なくお奨めできるのが嬉しい。是非いつまでも長く続いてほしいイベントである。できれば値上がりすることなく。(^^;)ゞポリポリ。1984年「PICASSO」、1988年「GOLD」、そして2001年、東京青山のいっかくで新たなクラブ伝説が生まれようとしている。(笑) MUST CHECK IT OUT!
AGEHA − 東京都江東区新木場 2-2-10
東京の湾岸お台場地区は、NYのチェルシ−やトライベッカに匹敵するクラブエリアであるばかりでなく、そこに妙な因果関係を感じられずにはいられない。バブル期にはジュリアナ東京をはじめ、近年もマザ−という超デカ箱があったことは記憶に新しい。(開店後わずか3日で閉鎖になってしまったが) 90年代、サウンドファクトリ−やトンネルが君臨していた時代は、ゴ−ルドの全盛期と重なり、現在ではトワイロやロキシ−のような大型クラブに拮抗するようかのように、都内最大のクラブ「アゲハ」が鎮座しているというわけだ。
とにかく、この不景気な時代によくこんな思いきったプランを実現してしまったものだと感心してしまう。日本の30年あまりのクラブ史においても類をみない巨大なハコであるばかりか、世界のハウス箱のヒエラルキ−における位置づけに関しても、トップファイブに食いこむのは間違いない。サウンド的にも、ZOUKやMOSレベル、あるいはそれ以上のポテンシャルを秘めているといっていいだろう。
ゲストDJ陣の顔ぶれも、欧米のクラブに見劣りのしない錚々たる面子が並ぶ。Junior Vasquez、 Louie Vega らのビッグネ−ムから、Sanday Rivera などの旬のア−チストまで、バラエティに富んだ通好みのブッキングが嬉しい。
都心からやや離れているのが不便だが、週末には渋谷からシャトルバスが運行している。なんだか遠足気分でワクワクしてしまうのはワタシだけではないはずだ。屋外には屋台エリアがあり、世界各国のエスニック料理などがリ−ズナブルな値段で食べられるのもユニ-ク。
YELLOW − 東京都港区西麻布 1-10-11 セソーラス西麻布B1/B2
生涯で最も多く通ったクラブを一つ挙げろといわれたら(まだ死んじゃいないが)、イエローの他においてない。が、ここが自分のお気に入りナンバーワンのハコかといえば、必ずしもそうではないのだが。クラブ業界=サービス業というのがまったくわかっちゃいない高飛車な態度の店員、何を注文しても美味しいとはお世辞にもいえないドリンク&フード。天井が低くやたら圧迫感のあるフロア、(中央にデカイ立柱があり邪魔でしょうがない)イエローは音がいいという輩も多いげど、ホンマかいなと思ってしまう。海外はおろか国内でもこれほど不協和音が共鳴するフロアを私は知らない。換気システムも十分ではなく、1000人も入場すれば瞬く間に酸欠状態に陥り、人で溢れかえったフロアは窮屈なことこのうえない。ブースが目立った場所にあり、全員が全員ゲストDJを方角を向いて拝むように踊る日本ならでは悪しき因習を定着させたのは、イエロー最大の功績かもしれない。(笑)いろいろ欠点をあげれば枚挙にいとまがないが、それでも懲りずにこのハコに通ってしまうのは、いうまでもなくお気に入りのDJが頻繁にプレイするからに他ならない。(イエローのスタッフの皆さん、言いたい放題の誹謗中傷スイマセン。でも悪意はないっス)では、お前はイエローなるハコが嫌いなのかと問われれば、やや間を置いてやはり好きだと答えてしまうだろう。海外から来るDJにはできればもう少し音のいいハコで演って欲しいと願いつつも、ここにくると何故かホッとしてしまう自分がいる。幾度となく体験した至福の時間。モラレスであれ、フランキーであれ、最初にハウスの洗礼を受けたのはイエローだったという人は決して少なくないはずだ。これほど多くのクラウドに多大な影響を与え、そして愛されたクラブは過去日本のクラブ史においても珍しいのではないか。今や、あのゴールドを際置いて、アジアを代表するクラブといえばイエローと回答する海外の著名なDJも多いときく。もし仮に万が一のケースとして、このクラブが閉店するようなことがあっても、過去に日本にあのような素晴らしいハコがあったことを誇りに思い、懐かしく回想する日が来るに違いない。
WOMB − 東京都渋谷区円山町 2-16
渋谷ラブホテル街のど真ん中にあるという立地条件もなんのその、オープニングイベントにはあのJUNIOR VASQUEZをゲストに招くという大胆なプロモ−ションで、業界関係者の度肝を抜いた。1万円という破格のプライスにもかかわらずパ−ティ−は大成功に終わったのである。その後も、SVEN VATH、VICTOR CALDERONE,、DAVID MORALES などワ−ルドクラスで活躍するDJをコンスタントに招聘。東京クラブシ−ンの一翼を担っている。サウンドシステムはPHAZON@USA。四方八方から立体的な音響が飛び交い、地鳴りのような重低音が売りだという。プロディ−スはTWILOを手掛けたSteve Dashという触れ込みだが、それにしてはイマイチ大人しい印象。どうやら周囲が住宅街という悪条件のためヴリュ−ムを上げることができず、今だその真価を発揮できないままらしい。1階から5階まで吹き抜けの空間であるため壁の反響を利用できず、そうとう大音量でないと音が抜けていってしまうのだそうだ。せっかくのサウンドシステムなのに…。随分ともったいない話ではある。
MANIAC LOVE − 東京都港区南青山 5-10-6 B1F
オ−プニングパ−ティ−はハンス・ベルメ−ルを意識したような欧米写真家によるSMショ−だった。(笑) たしか写真評論家の飯沢耕太郎さんが主催していたような記憶がある。 後にここが東京アングラテクノシ−ンを象徴するクラブになろうとは、この時点で誰が想像したであろうか。客が呼べるからといって安易に海外のDJを招くプロモ−タ−が多いなか、DJ WADA、SHINKAWA、MAYURI、Q'HEY ら、MANIAC LOVEならではのオ−ルジャパニ−ズオンリ−なDJ陣は新鮮に映る。アジアンクラブカルチャ−のアイディンティティを感じさせる硬派なクラブとしての存在感は、欧米の著名なクラブ、例えばMOSやFUSEに引けをとらないだけのパワ−があるのだ。そんなところが、イギリスの音楽誌MUZIKにおける世界のクラブ特集で日本のハコで唯一選出されるという評価に繋がったのだろう。音響システムはマスタ−ブラスタ−。硬質で、かつエネルギッシュなサウンドパフォ−マンスは、ハ−ドミニマルテクノやワ−プハウスにベストマッチング。日本の電圧の低さを感じさせないタイトな音圧がこれでもかとばかりに迫ってくる。
お奨めのイベントはなんといっても日曜のアフターアワーズパーティー。早朝から体が壊れんばかりに踊り狂うクラウドの眺めは壮観だ。オイオイ、ここは本当に日本なんかよ?と疑ってしまわずにはいられない。そのアナ−キ−な空気に、ただただ圧倒されることだろう。アメリカンコーヒーが飲み放題というのも良心的。
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